波の裏

この日から20年
はるかフィジーの最果ての島と
村人は元気かな〜

フィルムを詰めたカメラを握りしめ
波の中を逃げ回り
飲み込まれ

壮絶な時間だった

1時間泳ぎ
小さな窓から見える
フィルムの残り数を
みると
なんと0のまま

また泳いで岸まで30分
怒らない、怒らない
自分が悪いと呟いて

恐る恐る謎を開くと
カメラの中からフィルムが消えていた!

入れ忘れた・・・・

またフィルムを詰めて
沖へ向かった

そうしたら
撮れた1枚

当たり前のように
沖の波でひとり
大波がきたら潜り続けた時間は
精神的に強く育ててくれる
黙って武者修行

どうせ大して泳げず
波に溶け込めず

体で経験を教わるしかないと
わかっていた

日常では決して行かない
波の中
命の儚さと宇宙と海の美しくも恐ろしい
はざまに身を投じた

夕方
空も隠す波の壁に包まれ
まるで漫画のような瞬間を大笑い

浮き輪もなければワラもない

胸に恐怖が集まっては消え
集まっては残り

今思うと
あの容赦ない美しいこの波
があり
今がある

大胆に
思い切りやってみる

ネットや頭は捨てること

変幻自在波の裏

遅いことなんかない
とにかくなりふり構わず
やること

頭はすてろ

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