海の雨

天候は選ばず
簡素な道具で
なんであれ、そこに行く

風に椰子の葉がさされ
川のように流れる海は
小さな島を削る音がする
山には妖精がいるという村人

テレビもない美しい時間

剣道のためしあいでもない
人間界のルールの無意味さを体で知る
蒼い海は、恐ろしい

正直帰ると決めて
泳いで帰るときはほっとするが
緊張を緩めないよう足元や周りにサメがいないか気にかける

人間の雑味や余計なものは捨ててこないと
この海から戻れないことも知っている

幾ばくかの時間
幾ばくかの写真を撮らせてくだい

そんなことを
誰もいない大海原の青いゼリーの中で思う

嘘もかけ根もない
大宇宙の波動に漂うこと

サンゴや魚や海どりの完璧な世界に
投げ込まれた
限られた時間しかここに入られないように
全く溶け合えない邪魔な石ころが俺

そんなフィジーの最果て

雨が水面を叩き
波がやもこともなく
海の中にも雨が降っていた

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