泳力の彼岸

この日も大雨
基本的に天候は選ばない
クローズといって波がもう
ぐちゃぐちゃに爆発した時は行かないが

ここは沖から4〜5発のセットが来る
セットとはある感覚でまとまって来る数本の大波を言う(サーファー用語)

空が隠れたこれに巻き込まれた

胸に恐いアドレナリン潮が引くように集まる
ここで気持ちが引くと負けて腰の力がぬける

沖へ向かい片手でクロールするが
が間に合わず目の前数メートルで
崩れた6mの波
もう潜るしか無い!

ド〜ン!と
暗黒の泡と絵も言えぬ力に巻き込まれ
焦らないようにしたいが
水面方向に見える光の穴のへ向かう

水面で息を吸うが浅瀬にもってかれ
さらに巨大な波が崩れ
暗黒の洗濯機へ

頭が上を向き
なんとか口から水面に上げた瞬間に頭の上に波が!

もの凄い轟音と闇
空気をあまり吸い込む時間がなく
水を飲みながら巻かれ
水中でもがいてしまう

本当に苦しさと
恐怖で胸が潰れそうになる

片手にカメラだから
片手で水中を泳ぐ

4発目が来たら
もう肺にも体にも酸素が無いから
まづい!と感じるが

4発目は来なかった

ぜいぜいしながら斜めに右へ右へと
水面を片手でクロールした

身を以て知った時間は
忘れない

海はわざと命を奪おうと
した訳でもなく

あるがまま

ありのままの地球と海

に小さな人間が間違っていただけ

半端なく喉が乾き
心臓がドクドクしている

泳力の彼岸で・・・・

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