聖域

もう生涯で2度と行かない場

いつもの波の位置の300m左

島にそって半円状にくるむ珊瑚の崖
その崖が急に浅くなる場所の
右から左

ここは満ち潮の時しか入れず
サメがいる場所

数ヶ月前勝手にヨットで来た白人が
村に挨拶もせずサーフィンをしたら
足首をがぶり!

でもミキーは大丈夫
お前は村でチーフ(酋長)にセブセブ(お祈り)もうけてるし
お前は家族だから

相変わらず根拠のない
フィジアン セブ

行ってみる船で?

モーターボートで10分
グリングリンの高速な波

飛び込んで!今
船がひっくりかえるから!

俺、沖で待ってるから

あっというまに
背中と心を
押し出しにあい

考える間もなく
ここにいる

1時間すると
強烈なスコールが

セブが雨合羽を来ながら
近づき

ごめん〜
子供や村の人船で迎えにいきたいんだ〜
どうする?まだいる?海に〜

何分?でもどる〜

20分!〜

きっと嘘だと
思いながらも

いるよ俺〜

40分がたち
やっぱり船は来ない!

あたりは暗くなり
水面を叩く一面の雨

潮がグングンと引き
強烈な黒い生き物のような波が
三日月型にドミノ倒しのように迫る

もう珊瑚の割れ目の穴に
体をいれて波圧をかわし

集中力も切れかけ
絶対夕食にサメが来るこのばで

水中の周囲を回転しながら覗いては
水面から顔をだし
今度は波を読む

妙に怖さが胸に集まる

いや〜来ないな〜セブ
もう帰りたいけど

泳ぐには相当あるな〜

多分遠回りをしないと危険だから
岸まで600~700メートルか40分は泳ぐな〜

もう5時半だ
あと10分位で帰らないと夜になる

最後はもう撮る気持ちにもなれず
ひたすら高速な波を潜ってかわす

やがて10分すると遠くからエンジンの音がして
墨色の雨の中
セブが来た!

おせえ!よセブ!〜

ごめんね〜フィジータイムだから〜

思い出の海

張りつめた独特な聖域の1つ

その夜のシャワーと
知に足が着く海辺の部屋で独り
1日を懐かしく感慨深くかみしめた

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