よくぞ

あの白波を毎朝、毎日観察している
行ってみないとわからないから
とにかく行く
雨だろうが嵐だろうが
波が無い時以外は状況は選ばない

なぜなら選ぶのはずるいから

酸素ボンベなどずるい人間の都合の道具は捨て
足ヒレと水中メガネだけで行く

独りで持てるだけの荷物と機材で
裸同然で行く

サメの種類を暗記し
来たら目力で追い返し
それでも来たら鼻先を叩く練習をし

行くぞ!
と決めたから

とはいっても明らかに危ないときは
着いて5分でもすぐに戻る

全神経と7感10感を使い
気配を感じ取り
野生に戻る

人間を捨てる訳です

村人の小舟がでないときは
あそこまで
片手と両足で泳いで30分
浅いラグ?ンから 急に深くなり
また浅くなる場は
まさに命がけの決戦場
この世との決別であり
あの世への入り口

あそこまで行き
フィルムが入ってなかった事件1回
フィルムが巻けてない事件2回

それはがっくりするが
焦った自分が悪いのだから
30分泳いで戻り
また30分泳ぐ

たまに気の狂ったサーファーがいる
と心が安心だが
この波は海がへこむ程、海面がせり上がる
あっという間にロール波となり6m程の落差になる
その真下がこれ
巻き上げられ,浅い海底に叩き付けられ
背中にその何十トンもの波を食らったら
死ぬ

紙一重に
本物がある
古い武術ににている

何億年もの古い時間が作り上げ
この島の自然環境や風や村人の足跡により
出来た傑作

人がた安く壊し
た安く行っては行けない場
村人も今迄ここでは泳ぎもしない

今思えば伊勢神宮の内宮のさらに中のような
妙なしまった空気が圧倒的に存在し
言葉には表せない
その必要もない妙な次元

始めの1週間は怖すぎて
なかなかブレイクする奥へ
泳ぎ寄れず

ぬきあし
さしあしで

ようやく今では受け入れられた気がする

それでも正直
早く帰りたくなる
戻ると決めた瞬間に
一気に怖くなりつつも
ホッとする

どうみたって
遊泳禁止
である

ライフガードも誰もいない海で
1対1
いや1対何十億の古戦場

とにかく喉がかわき
鼓動が早くなり
胸にその濃縮された恐怖が電気となり集まる

パニックにならないよう
肉体的には誰もがパニックから
逃げもどるすべ

それを験力というなら
その技をここで習得したかった

魔法の1つでも覚えたかった

泳力のあの世

本当に独りでこの世界を
この場で見た人間が
今迄いなかった奇跡と
不思議

幸せだった

くどいくらい怖さは何処にも隠せない

人間にはこうした地球の強さを
生身で知る必要がある
ひげのじじいも誰も助けちゃくれない

波が来たら退くはない
波が来たら
とにか沖へ向かい
常に波に対して垂直?直角?
に意気よいよく向かい
ギリギリで見切り潜って水中で体をひねり泳ぐ

大声で気合いもいれる!

何発も待った無しで迫り崩れる暗黒の波に
もみくちゃにまかれた時ほど、怖く苦しい時は無い

何も出来ません

それが試合ではない
果たし合いの境地

よくぞ行き
よくぞ戻れました

という訳です

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